中国が玉切れなので、関税争いはそろそろ一服でしょうか。
米中貿易摩擦の根っこは覇権を賭けた米中の戦いであり、米中貿易戦争と捉えるのではなく、大きな米中大戦争のうちの、経済戦の一部と捉えるべきでしょう。
現在起きているのは、米国を超える力をつけようと台頭する中国、その中国の頭を抑え込もうとする米国、という構図であり、この構図が固定されているため、あと50年はずっとこんな感じかも知れません。
評論家の宮崎正弘氏は”かくて「米中百年戦争」が開始された 関税による貿易戦争は五十年つづく、経済史未曾有の大戦になる”、”2018年7月6日を後世の歴史家は「米中百年戦争が開始された」と書くだろう。”と言い、米中貿易戦争を古代ヨーロッパの「ペロポネソス戦争」「ポエニ戦争」に例え、100年戦争になると言っています。
宮崎正弘の国際ニュース・早読み <<関税による貿易戦争は五十年つづく、経済史未曾有の大戦になる (2018年07月07日発行) | 宮崎正弘の国際ニュース・早読み – メルマ!
実際50年後の世界はどのようになっているでしょうか?
下のグラフは2012年にOECDが発表した「Looking to 2060: Long-Term Global Growth Prospects」というレポート中の将来の各国のGDPシェアです。
これを見ますと2030年時点で中国は世界のGDPの28%を占め、米国、EU、日本が束にならないと中国に対抗できません。また、インドのポジションは11%とまだまだ小さいです。 それ以降中国の成長は減速し、2060年での中国vs米国、EU、日本の構図はあまり変わりませんが、インドの存在感が増しています。
大きくなる中国とバランスを取るように、米、EU、日本が束になって対中包囲網を形成するのは、恐らく必然なのでしょう。
ところで、過去の歴史を振り返ると、覇権国へ挑戦した国が、覇権を取れたことはありません。
覇権国 挑戦国
16世紀 スペイン ポルトガル
17世紀 オランダ フランス
18世紀 イギリス フランス
19世紀 イギリス ドイツ
20世紀 アメリカ ソ連
21世紀 アメリカ 中国
落ち目とはいえ挑戦国より強い覇権国が挑戦国を抑え続けるわけですから、簡単には覇権を取ることができないんですね。そして両者が消耗している間に力をつけた第3の新興国が次の覇権を取るんですね。
上のグラフの通り、2060年まではまだ中国と対中包囲陣は拮抗してますので、やはりこの戦いは50年続き、漁夫の利を得たインドが次の覇権を握るのではないでしょうか。それまで生きてるかわかりませんが。
トゥキディデスの罠という言葉があります。
トゥキディデスは古代ギリシャの歴史家の名前です。冒頭にペロポネソス戦争という言葉が出ましたが、この紀元前5世紀のアテネとスパルタのペロポネソス戦争をトゥキディデスは分析しました。この戦争は古代ギリシャの覇権を握っていたスパルタが、新興国アテネの台頭に脅威を覚えて開始したとされています。
このように新興国家が覇権国家と覇権を争う時、軍事衝突に発展しがちなことをトゥキディデスの罠と言います。
Wikipediaには『アリソンとその著書『Destined For War』によると、過去500年間の覇権争い16事例のうち12は戦争に発展したが、20世紀初頭の英米関係や冷戦など4事例では、新旧大国の譲歩により戦争を回避した』とありますので、少数派ではありますが、戦争を回避することは可能です。
しっかりと歴史に学ばないといけませんね。