米国決算発表シーズンもいよいよ大詰めです。
S&P500構成銘柄の決算発表進捗率は74%まで進捗し、全体感が明らかになってきました。
これまでの集計結果の感想は、利益は事前予想を上回る出来、ガイダンスも実は弱くない、投資家の解釈が変化している、という感じです。
Factsetの集計によると、S&P500構成銘柄の発表済み決算(全体の74%)のうち、78%が予想をBeat、8%がIn-Line、14%がMissしました。
これは過去5年平均のBeat率71%を上回っています。
セクター別EPS Beat率
セクター別売上Beat率
また、EPSのサプライズ幅は+6.8%と前回集計よりもまた強くなり、過去5年のサプライズ幅+4.6%を上回っています。
アナリストは2018Q3決算を受けて2018Q4決算および将来の予想を修正するのですが、Q4(10~12月)の初月中(10月)に行われたS&P500構成銘柄の2018Q4決算の予想修正は、EPSでマイナス1.1%でした。
やっぱりガイダンスが良くないんだと思われるかも知れませんが、このマイナス幅は過去5年平均のマイナス1.6%、過去10年平均のマイナス2.1%よりもマシです。
各四半期の初月中に行われた各四半期決算の予想EPS修正幅
つまり、決算を受けて翌期のEPS予想を下方修正するのは普通のことであり、今期のガイダンスはどちらかというとマシな方なのです。
FAANG銘柄のガイダンスが弱く、株価急落というニュースがたくさん流れているため、米国はとても状況が悪いという印象を持っている方もいるかも知れませんが、実際の数字上では過去よりもガイダンスはマシなのです。
それにも関わらず株価が冴えないのは投資家がより慎重な目線でバリュエーションを見直しているからです。
「米国企業の2018Q3決算シーズン、決算進捗率48%までの集計結果:利益は堅調もガイダンスが弱い」でも書きましたが、金利の上昇に伴って株以外にも魅力的な投資対象が増えてきたので、他に良い投資対象があるのだから、もっと強い業績を見せないと同じ株価はつけられないよ、と投資家の態度が変わっているのです。
実際に全体的な傾向として、予想を上回る決算を発表しても、EPSのサプライズ幅が相当大きくないと株価が下がる傾向にあります。
横軸:EPSのBeat幅、縦軸棒グラフ:決算発表前後の株価騰落率
また、景気サイクルが終盤に入っているんじゃないかとの心配もあるでしょう。
ファンダメンタルが良いのに安くなってお買い得なのか、これまでの値付けが楽観的すぎてまともな価格に修正されてきているのか、現在のForward PER15.6倍が過去10年平均の14.5倍より高いことを踏まえればおそらく後者なのでしょう。
投資家はFRBの金融緩和による低金利と潤沢な流動性を背景に楽観的な値付けを行ってきたのです。そして金利上昇と量的緩和の縮小でその修正が行われているのです。
つまり、景気は強く、利益成長もガイダンスも悪くないが、それ以上にFRBの引き締め政策によって株価はバリュエーションの修正を迫られている状況と言えるでしょう。
S&P500
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