株式市場は昨日急反発しましたが、10月からの急落を経てS&P500のバリュエーションはForward PERで14.1倍となり、中立程度から少し安いかなという程度になりました。
米国株価急落でもパニックになるな!すぐには止まれないFRBの金融引き締めを冷静に受け止めるで書いてるので繰り返しになりますが、現在の調整はFRBの量的緩和縮小と利上げに伴うバリュエーションの訂正であり、実体経済というよりもFRBの問題だと考えています。
株価はPER×EPSで表すことが出来ますが、ITバブルの時のForward PERは25倍もあり、バリュエーションがバブルでした。リーマンショックでは民間セクターが大きな債務バブルを抱えており、その解消のためにEPSが大きく毀損しました。
では現在の状況はというとForward PERは中立からやや安く、EPSは企業部門の債務は高いですが、家計部門が健全になっているためまだ上昇していくと考えられます。
そして先日のFOMCでFRBのハト姿勢が見られたことで、買い増しをするには良いタイミングだと思います。
定期的に買い増しを行うサラリーマン投資家がすべきことは買い増しのタイミングを工夫することであり、売りはITバブルやリーマンショックのような時だけで良いかと思います。
やたらとリセッションが叫ばれてますが、バブルのないリセッションでは株価の下落も20%強程度です。天井で売って底で買い戻すのが難しいと考えると、売るメリットはせいぜい10%のリターン、税金などを考慮するとたかが知れているのです。
上記の記事で私は下記の様に書いてましたが、今もそのまま使えると思います。
”引き締めに耐えられないマーケットと止まれないFRBの組合せによって、しばらく辛抱の時間が続く可能性が高いと考えています。
しかし、元々暴落のエネルギーが溜まってないことや、インフレも高まらず、FRBの引き締めもそろそろ限界が見えていることで、中長期投資家としては手持ちの株を手放してまで下落方向に賭けるのは得策ではないでしょう。
逐次買い増しを行うサラリーマン投資家としては、しばし追加投資を待って、FRBの引き締め態度が軟化した時から買い増しを再開すれば良いのではないでしょうか。”
簡単にEPSとバリュエーションについて確認しておきましょう。
まず2019年のEPS予想について、Factsetの集計では174.7ドルと予想されています。
下のグラフを見ると2013年から2016年までEPSはあまり伸びていなかったのですが、2017年以降はドル高が止まり、原油安も一服し、減税もあり、大きく伸びたのですね。
ちなみに2020年のEPSはこちらのサイトで194.17ドルと集計結果が出ており、2019年からさらに10%上昇が見込まれています。
一方、Forward PERは昨日のS&P500終値の2467.7ドルを使えば、14.1倍になり、これは過去5年平均の16.4倍、過去10年平均の14.6倍ともに下回っており、割安に見えます。
しかし金利を見ると過去10年平均より高めの位置にいるため、Forward PERが低くてもバリュエーションは中立くらいでしょう。
しかし金利が高いからバリュエーションも低めにあるべきというだけで、リターンが低いという意味ではありません。高金利の時代は投資収益率が高くなるというだけです。
また、家計債務は9月末時点でさらに健全化が進みました。
橙(家計純資産:右軸)と青(家計負債:左軸)、ともに対可処分所得比率
つまり、クレジットサイクルの拡大局面がまだ終わっていない、クレジットサイクルが伸びきっていないので縮小もできず、EPSが底堅くなるということです。
クレジットサイクルは知らない方も多いかも知れませんのでそのうち記事にしたいと思います。
以上より、バリュエーションは中立からやや安く、EPSの底堅い上昇を見込み、FRBの利上げ、量的引き締めの環境下で、日柄調整か上昇すると予想しています。
ただし、米ドル、お前はだめだ。
・米国が円高ドル安を望む瞬間:財政赤字とインフレに対する危機認識の変化点