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米国家計はなぜ強いのか、景気後退直前の家計はどのような状態になるのか

米国の個人消費支出は米国のGDPの70%弱、世界全体のGDPの15%~20%を占めており、米国の個人消費が景気の動向を決めると言っても過言ではありません。

今回はその米国家計がなぜ強いのか、そして過去の景気後退局面での家計の状態をファンダメンタルズから分析し、次のリセッション(景気後退)が来るタイミングをつかむ手掛かりとしたいと思います。

私は過去の記事から米国の家計が健全なため天井にはまだ早いんじゃないかと言っていましたが、その理由をお話しします。

 

下のグラフは米国の個人消費支出と個人消費支出価格指数とそれぞれのコア指数の前年比伸び率です。
個人消費支出:Personal Consumption Expenditures(PCE)
個人消費支出価格指数:PCE Price Index、PCEデフレータとも呼ばれ、インフレを表す指標としてFRBが重視
コア指数:食品、エネルギーを除いたもの

グラフを見ると、リーマンショック以降、PCEとPCE Priceとも力強く回復しており、足元でも加速気味であるということが見て取れます。コア指数とずれているのは主に原油価格のためです。

 

この強さの背景には米国家計の健全さがあげられます。米国の家計はリーマンショック以降デレバレッジを進め、可処分所得(税引き後所得)に対する負債比率が減少し、純資産比率が上昇しています。

これはリーマンショック以降も負債を積み上げた政府部門や企業部門と対照的ですが、その話は別の機会にしたいと思います。

下のグラフは米国家計の純資産(橙:右軸)と負債(青:左軸)の対可処分所得比率を示したものです。

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リーマンショック以降、負債比率(青:左軸)は低下し続け、足元の対可処分所得比率はちょうど1倍程度に低下した一方で、純資産比率(橙:右軸)は7倍近くまで上昇しているのが分かると思います。
グラフは2018年Q2までとなっており、少し遅い情報なので注意が必要ですが、米国家計はリーマンショック以前よりも健全になっており、今もなお健全化が進んでいるということです。

そして特に注目して頂きたいのは、景気サイクルと家計の純資産・負債比率の動きに法則があることです。
景気拡大局面は、負債比率と純資産比率の拡大が同時に続く黄金の期間です。この期間は負債の拡大が景気の拡大を生み、それが純資産の拡大を生むという好ましいサイクルが続いています。

しかし、ある程度負債が積み上がり金利が上昇していくと、純資産の伸びは徐々に負債の伸びに追いつけなくなっていき、ある時純資産比率だけが低下する時が来るのです。

景気後退局面を見てみると、米国家計の負債比率が上昇する一方で、純資産比率が低下するという「純資産・負債比率のダイバージェンス」が起きた後に景気後退が訪れているのが分かります。
この純資産・負債比率のダイバージェンスが起きると、家計は純資産が減っているのに負債が増えているということに苦しさを感じて、財布の紐を引き締めるのです。

下のグラフは米国の貯蓄率の推移ですが、景気が良い時はお金をどんどん使って貯蓄率が低下していき、ある程度グラフが下まで突っ込んだあと、景気後退の少し前から景気後退が過ぎるまでは概ね貯蓄率が上昇する傾向にあります。つまり家計が財布の紐を引き締めているということです。
そして景気後退局面が過ぎると、再び負債比率と純資産比率が同時に拡大する黄金の期間が訪れるのです。


翻って現在の貯蓄率の水準は過去2回の景気後退局面より高く、そこまで過熱感は見られません。適度に貯蓄に回しているということです。

そして純資産比率と負債比率が同時に上昇する黄金の期間も体験していません。

 

次にフローの面で問題ないか見てみましょう。

下のグラフは家計の金融債務負担の可処分所得比率(紫:右軸)と米国2年債利回り(青:左軸)の推移です。
金融債務負担:Financial Obligation、住宅ローン支払いや家賃、持ち家であれば損害保険料や固定資産税の支払い、その他には個人ローンや自動車ローンの支払いなどを合わせたもの


債務負担が上昇すれば当然消費には悪影響を与えます。
債務負担は金利と連動するため、現在進められている利上げには注意が必要ですが、現在の水準はかなり低い位置にあり、こちらも問題無いでしょう。

 

以上より、米国家計はストックで見ても、フローで見ても健全であるため、そうそう簡単に崩れることはなさそうですし、場合によっては上記の黄金の期間が訪れてもおかしくありません。

ただし注意が必要なのは、この分析は格差を無視しているのと、米国の外側、特に新興国の危機が飛び火する可能性があるという点です。

実際、属性が低い人たちに貸し出されている小銀行のクレジットカードローンはリーマンショック時並みに悪化していますし、新興国の破綻はCDS(Credit Default Swap)を通じて世界中に飛び火する可能性があります。

 

とはいえ私が相場に向かう時のスタンスは基本的にブルです。

世の中の仕組みとして金融資産は膨らみ続けるように出来ていると思いますし、米国株に関しては基本的に上昇するものだと考えています。

また、マーケットタイミングも難しいため小さな懸念であればあまり気にしないようにします。小さな崩壊であれば数年で立ち直れるため、長期投資家にとっては怖くないためです。

その代わり、本日の分析のような指標を確認し、市場にバブルや懸念しか残っていないような時は手仕舞うというやり方(実際は金鉱株に手を出します)で、大きな崩壊には巻き込まれたくないという感じです。それがなかなか難しいのですが。

ご参考になれば幸いです。

 

なぜ基本的にブルなのかについてはこちらを参照

www.artisticinvestmentstrategy.com