アーティスティック・インベストメント・ストラテジー

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実質実効為替レートから見るドル高円安の賞味期限

1月のFOMCFRBハト派に転換したにも関わらずドル高が進んでおり、昨年12月以降のドル安を取り戻しつつあります。

これは米国の経済が未だ強く、FRBハト派に転換したとはいえ引き続き量的緩和縮小を継続している、一方欧州など米国以外の経済指標が弱く、ECB(欧州中央銀行)、日銀などの中央銀行FRBより緩和的な姿勢を示しているからと言われています。特にユーロは経済指標の弱さだけでなくBrexitがハードランディングするのではないかという懸念から嫌われています。

しかし実質的にこれ以上緩和の余地がないECBや日銀がいくら緩和的になろうとも意味はなく、FRBが起こす変化の影響の方がはるかに大きいことは2016年前半のドル安局面で身に染みているはずなのですが(2016年前半はFRBが利上げペースを落としたことでドル安となった年でした、その間ECBと日銀は緩和継続中)。

 

今回はそういった景気や金融政策の格差による為替レートの方向性ではなく、水準感を実質実効為替レートから見たいと思います。

まず実質実効為替レートの説明から。

為替レートは主に、名目為替レート、実質為替レート、実効為替レートの3つがあります。
名目為替レートは普段使う為替レートのことです。
実質為替レートはある時点を基準にして、名目為替レートの変化に加え、2国間のCPI(消費者物価指数)などのインフレ指標格差を割り戻すことによって、実質的な為替レートの変化が分かるようにした為替レートのことです。例えば去年を100として、今年に名目為替レートが98と2%円高になったとしても、日本が0%インフレ、米国が2%インフレになっていれば円高になった分値上げされており買えるものは変わらないので実質為替レートは変化なしの100になります(98×(1+2%)/(1+0%)=100)。為替レートというより変化を見るための指数ですね。
最後に実効為替レートですが、これは多国間での為替レートを加重平均した為替レートです。名目為替レートと実質為替レートは二国間の話でしたが、世界全体で見てドル高が進んでいるのか?などを見たいときに、それぞれの二国間の為替レートを加重平均して推移を見ることで世界全体での通貨の強さが分かります。名目為替レートを加重平均すれば名目実効為替レート、実質為替レートを加重平均すれば実質実効為替レートになります。加重平均のウェイト付けは各国の貿易量に比例させるのが一般的です。こちらも為替レートというよりは変化を見るための指数です。

以上為替レートの説明でしたが、米ドルの実質実効為替レートを算出するには対米ドルの複数国の実質為替レートを名目為替レートをCPI格差で割り戻して計算し、さらに貿易量で加重平均するという骨の折れるものなので自分で計算するのは難しいです。

ありがたいことにBIS(国際決済銀行)が月次で更新してくれているのでそれを参照します。加重平均は主要27か国のNarrowベースと61ヵ国のBroadベースがありますが、Narrowベースの方が過去まで遡れるためNarrowベースで作成しました。(データは2018年12月末まで)

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出所:BISより筆者作成(Narrowベース)

足元ではドル高円安が進んでいることが分かるかと思います。
順に見ていきましょう。

 
まずは米ドル。

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出所:BISより筆者作成(Narrowベース)

現在のドルの実質的な強さは2000年頃のドットコムバブルのピークに匹敵します。ピークの少し前の1997年にはアジア通貨危機があり、つい最近のトルコ、アルゼンチンなどの通貨危機と重なります。それより前だと1980年台前半のレーガノミクス、高すぎるドル高水準を是正した1971年ニクソンショックまで遡ります。

 
次に日本円。

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出所:BISより筆者作成(Narrowベース)

日本円も歴史的に見て安く、リーマンショックのピーク、レーガノミクス最盛期の水準です。

以上から、ドル円の関係で言えば実質的にかなりのドル高・円安水準となっており、米国経済がゆるやかに減速する中ではこの水準感を維持できなくなるのも時間の問題なのではないかと考えています。
このブログで何度も書いているように今回はすぐに破裂するバブルが見当たらないため急激な変化ではないかも知れませんが、円買いドル売りのポジションは時間が味方についてくれるでしょう。

実質実効為替レートの加重平均に使う貿易ウェイトが気になる方はこちら
2011-2013の貿易額が使われています。f:id:shurrin:20190217162642p:plain

 

ちなみに日本の経常収支黒字(米国からすると経常収支赤字)という構造的な要因によって、米国ではドル安インフレが、日本では円高デフレが、名目為替レートでは円高ドル安が構造的に進むのですが、それについては下記の記事に書いてあります。
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・なぜ日本は円高・デフレ・不況になるのか、本当の原因とその処方箋:内需拡大によって米国とWin-Winになることを望む(2018/12/3)