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原油価格の基本的な見方

原油価格は相場に結構影響を与えるのですが、個人投資家ではなかなかとっつきにくいと思いますので基本的な見方について書きたいと思います。
 
昔は原油価格が下がれば米国人にとっては可処分所得が上昇してプラスに働くと言われていましたが、既に世界最大の産油国となった現在では原油価格の下落は相場やセンチメントにネガティブに働きます。
原油価格の変動はインフレ率に直結するので金利も連動して動きますし、原油が下がればエネルギーセクターが下がるのはもちろんのこと、航空セクターには輸送費減少でプラスに効いたり、意外なところでは産油地域のテキサス州の消費が落ち込んで小売りセクターに影響が出たりすることもあります。
 

そんな重要な原油価格ですが今回お伝えしたいのは、

OPECの石油基本戦略

ヘッジファンドのおもちゃになっている

の2点です。

 

原油市場というのは2019年現在、世界でおよそ日量1億バレルの需要があり、需要は毎年100数十万バレル伸びています。供給はサウジアラビアがスウィングプロデューサーの役割を担いながら需要のプラスマイナス100万バレルくらいが生産されます。ですからこの需給ギャップによって世界で1日あたりプラスマイナス100万バレルくらいの在庫増減が生じ、週間では数百万バレルとなり、それを週次レポートなどで確認していくわけです。

メジャーなところでは米国エネルギー情報局(U.S. Energy Information Administration)の週次レポートがあります。米国では世界需要の2割である日量2000万バレル強の原油が需要されていますが、週次レポートでは大体数百万バレルから数十万バレルの在庫増減が発表されます。そして在庫が減っていれば原油価格が上がり、在庫が増えると原油価格は下がる訳です。

 

まず①OPECの石油基本戦略について、OPECは表向きは原油の安定供給などと言ってますが彼らの持つ原油資源の価値を最大化するという目的があります。簡単に言うと出来るだけ高い価格で売り続けるということです。OPECを主導しているのはサウジですが、サウジの戦略は「出来るだけ高い価格で売る、しかし高すぎてはいけない」というものです。

高すぎる価格というのは高値によって需要そのものが減ってしまったり、省エネや他のエネルギー開発が進んで石油が使われなくなってしまうような価格のことです。

つまり石油離れが起きない範囲で出来るだけ原油価格を高値に維持することで、彼らの埋蔵原油資産の価値が最大化できる、そのためにサウジはスウィングプロデューサーの役割を引き受けて需給を調整しているのです。

元々中東の石油は欧米石油メジャーに支配され買い叩かれていた過去があり、その反発から生まれたのがOPECですから、そういう組織なのです。

ですから原油価格を考える時は足元の需給ファンダメンタルを考えるのではなく、サウジは原油価格をいくらにしたいのか?、その価格にするために減産などの行動を起こしてくるか?という視点で予想する必要があります。

価格が低すぎればシェアを削っても減産してきますし、価格が高ければ増産して他国にあんまりシェア取ると価格暴落させるぞとプレッシャーをかけたりします。

 

最近の動きが分かりやすいので見てみましょう。

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(出所:EIAより筆者作成)

まず一つ目の矢印の時、2014年に入ってからOECD加盟国の原油在庫が急増していますが、自然に供給が増えたり需要が減ったりしたわけではありません。サウジが明確に増産に転じたことが原因です。
シェール革命によって2012年から米国の原油生産量があまりにも急速に拡大したため、OPECがシェアの低下を受け止めきれなくなったのです。
 
下記のチャートは米国とサウジの原油生産量です。

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(出所:EIAより筆者作成)

米国の増産量が凄すぎて分かりづらいですがサウジも日量100万バレルも増産しています。
サウジは価格よりもシェアを獲る戦略に大転換し、原油を市場に溢れさせることでシェール業者を潰そうとしたのです。この時期のサウジはわざと原油価格を下げるような発言をし、我慢勝負とばかりに原油価格を下げに来ました。

結果、原油価格はWTIで20ドル後半まで下落し、シェール業者は赤字を垂れ流す事になったのです。しかし、シェール業者はなかなか潰れず、正確には潰れる会社も多かったのですが、体力のある大手は増資をしたり、潰れた会社の資産を安く買い取って生産を続けるなどしてとても市場から退場する気配がなかったのです。

一方、サウジの財政が均衡する原油価格は80ドル台半ばと言われてますが、そうこうしているうちにサウジも財政赤字を垂れ流し、IMFから5年で外貨準備が枯渇するなどと言われ、初めて国債を発行することになるなど、結局シェールを潰すのを諦めてOPECで協調減産を決めたのです(グラフの↑矢印)。

つまりこの期間にサウジは2回戦略を大転換しており、1つ目の矢印ではサウジが原油価格を下げたいと思ったから下がった、二つ目の矢印もサウジが原油価格を上げたいと思ったから上がったのです。
サウジの思惑でファンダメンタルが変化するので、それまでの需給から未来を予想することは出来ません。
しかしシェールを潰すのを諦めて共存する道を選んだ訳ですから、昔の80~110ドル台に戻すのはかなり厳しいでしょう。シェアの減少に耐えられないはずです。
また40ドル台以下ではシェールの生産もあまり伸びず、サウジも価格的に厳しいのでそれより下に突っ込むのも厳しいと思われます。
大体50~60ドルが心地よく、大きめにレンジを見て40~70ドルに収まるという感覚を私は持っています。 
サウジの戦略としては「シェアを犠牲に高い価格」→「価格を犠牲に高いシェア」→「そこそこの価格でそこそこのシェア」という流れですね。
 
 

続いて②ヘッジファンドのおもちゃになっているについて、現在の原油先物市場にはCTA(Commodity Trading Advisor)と呼ばれるヘッジファンドが参入してきており、よく言って鉄火場、素直に表現するとおもちゃになっています。

クオンツ(数学的に過去の値動きを分析してその傾向が続くことに賭ける戦略)が多いようなのですが、特にトレンドフォロー系のCTAはお行儀が悪く、過去1週間のトレンドを見て同じ方向にポジションを取るといった戦略になっています。

ですからちょっとしたファンダメンタルの変化に対して値動きが増幅されてボラがかなり大きくなるのです。

 
このような市場で使えるのが半値押し・半値戻しです。 
当ブログはファンダメンタルズ押しなのに急にテクニカルか?と思われるかもしれませんが、ちゃんとファンダメンタルズの理由があります。
それは市場参加者のポジションです。
為替市場や原油先物市場などでは投機的取引がかなりのシェアを占めていますが投機である以上必ず反対売買が行われます。
あるトレンドが生まれた時、積みあがった一方的なポジションの平均単価はトレンドの真ん中あたりにあるはずです。ですから利益確定売りによってトレンドが反転すると、平均単価の半値までは利益確定売り圧力が続くと考えられるのです。
実際為替や原油市場を見ると大きなトレンドの後はいずれ半値までは戻ってくる傾向があります。


 
私は2019年の相場見通しとブログ記事について原油価格の反発を予想しましたが、これは上記の①、②を元に、原油価格がレンジの下限にあり、2019年から減産というファンダメンタルズの材料があり、また大きなトレンドによって半値戻しの50ドル台後半まではいずれ戻す力が働く、という理由で勝率が高いと考えて40ドル半ばで買いポジションを取ったわけです。
商品市場はボラが高く、事業収入があるわけでもないので主戦場にするのはオススメしませんが、たまにチャンスが来るので選択肢として持っておくことは良いでしょう。
 

原油を直接トレードする場合はDMM CFDが大手で安心です。
しかしこのようなおもちゃ相場で信用取引なんてするとボラティリティであっという間に全財産を失いかねないのでレバレッジはかけないようにしましょう。
DMM CFD-Commodityは1Lot3000円くらいで20倍のレバレッジがかかっているので6万円で1Lotポジションを取るくらいで丁度良いと思います。

原油株をトレードする場合、原油価格だけでなく、原油コモディティカーブを見るようにしましょう。
一般的に原油価格として参照されるのは直近限月原油先物価格ですが、それより将来の価格もありますので、短期の原油先物価格が上昇しても、コモディティカーブ全体がフラットニングして下落していると原油株も下がることがあります。
これを知らないと原油は上昇しているのに株価が下がってなぜだ?となります。
また銘柄によってかなり先まで先物市場でヘッジしていて、期近の原油先物価格の影響を受けない会社と敏感に反応する会社があるので、株価と原油価格のチャートを見比べてどの程度感応度があるかもチェックするとリスクが把握出来ると思います。