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九州電力が太陽光発電の出力制御を実施、太陽光発電投資家は20年先が見えているか?

日経新聞電子版に九州電力太陽光発電の出力制御を実施したという記事がトップになっていました。

九電、太陽光発電を一時停止 停電回避へ初の広域実施: 日本経済新聞

電力と言うのは需要に対して多すぎても少なすぎても停電してしまうため、電力会社は時間帯によって発電量を調節しています(同時同量の原則)。しかし太陽光発電は天気次第で発電量が決まってしまうため、電力会社は自分たちの火力発電量などを調節することでそれを吸収するのですが、どうしても発電量が多すぎる場合は強制的に太陽光発電からの電力をカットすることが出来るのです。

出力制御の対象は全てのソーラーパネルではなく、買取価格と同じくそれぞれの認定された時期、地域によって異なりますが、特に新しいものほど条件が悪い(買取価格は安く、出力制御の対象にもなりやすい)です。

実は九州電力は、鹿児島県にある川内原発1,2号機を2015年に、そして今年2018年3月に佐賀県玄海原発3号機、6月に玄海原発4号機を再稼働しており、原発の方が太陽光発電よりも優先されるため、出力制御が行われる土壌は整いつつあったのです。

今回のニュースは、少なくとも九州の太陽光発電市場は飽和したことを意味します。これ以上作っても共食いになるだけでしょう。

私はソーラーファンドのバリュエーションもさることながら、彼らの年5~6%利回りが出ますよといった売り方にも疑問を持っており、太陽光発電投資の何が問題かを説明したいと思います。

 

ソーラーファンドの概要

まず、太陽光発電は政府のFIT制度(固定価格買取制度)をベースに成り立っています。太陽光発電事業をしますという申請を出して、認定された時期に応じて今後20年の買取価格が固定される制度です。

買取価格は太陽光発電供給の増加やソーラーパネルの低価格化に従って引き下げられてきました。

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出所:朝日新聞デジタル

天気というのは1日単位では大きく変化し、発電量もばらつきがあるのですが、1年単位でみると日照量はかなり安定しており、キロワット時あたりの買取価格が固定されていると年間売り上げの変動はかなり小さくなります。

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出所:日本気象協会

テナントが出たり入ったりする不動産よりも、より安定的なインカム収入が期待できるのです。

ちなみに電力価格の実勢価格はスポット市場を見ると10円くらいで推移しており、電力会社は相当割高な値段で太陽光電力を買い取って、その負担を「再生可能エネルギー発電促進賦課金」として私たち個人の電気料金に上乗せしています。

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出所:第25回 制度設計専門会合 事務局提出資料(経済産業省)

まあ私は原発をすぐに全部廃炉しろ!とは思いませんが、長期的には脱原発出来るならそれに越したことはないと思うので、この賦課金について文句は言いません。

このように国民の負担によって実勢とかけ離れた電力価格を作り上げ、太陽光発電投資を促進しているのがFIT制度ということです。

 

 

問題①:バリュエーションが高すぎ、分配利回りは誤解を招く

まず一つ目の問題ですが、バリュエーションが高すぎます。
下の表に現在上場されている太陽光発電投資法人の直近の決算書から資産状況や収益性をまとめてみました。
(※時価総額Yahoo Financeで2018年10月13日に取得。カナディアン・ソーラーインフラ投資法人は上場したばかりのため年率化時に実質運用期間の244日を使用。東京インフラエネルギー投資法人は上場したばかりで財務諸表がなかったので除く)

f:id:shurrin:20181013214920p:plainソース:各社決算資料より筆者作成

まず驚くのがROAの低さです。

タカラレーベンインフラ投資法人は3.4%とわからなくはないのですが、その他は、いちごグリーンインフラ投資法人が1.7%、日本再生可能エネルギーインフラ投資法人が1.8%、カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人が1.4%!?と株式投資家としてはあり得ないほど低いです。

タカラレーベンインフラのROAが高いのは立ち上げが早かったこともあり、同じソーラーパネルでも買取価格が高い時に認定されたからなのではないかと思います。

このとても低いROAをLTV(Loan To Value:借入比率)50〜60%とレバレッジをかけることで、ROEを引き上げています。

また、PBRは1.3〜1.4倍と純資産に対して高いバリュエーションで評価されているため、ROEに対して益回り(年間純利益/時価総額)が低くなっています。

PBRが1倍を超えているという事は、太陽光発電所を1で作って投資法人を経由して個人に売れば1.4で投資口を買い取って貰えたという事なので、業者は笑いが止まらないでしょう。

分配利回りは6%くらいですが、益回り3%との差分は減価償却費で埋め合わせています。ソーラーパネルはおそらく20年で償却していると思いますが、その想定通りに資産が20年で使えなくなると想定してみましょう。

多くのサイトでは分配利回りばかりが強調され、それを見て購入している人は分配利回り6%として20年間で6%×20年間=120%のリターンだと勘違いしてるんじゃないでしょうか?

分配利回り6%の内訳が益回り3%、利益超過分配3%だとすると実際には減価償却された分の資産価値が3%×20年=60%減っているため、正しいリターンは20年で120%−60%=60%となります。

結局リターンは20年で60%と、年率3%にしかなりません。減価償却費分の分配は出資金の戻しであって利益ではないのです。

ちなみに不動産のNOI(Net Operating Income)にも減価償却が入ってしまっていますが、不動産の賃料は築年が経ってもあまり変わらないので、収益還元法による鑑定評価額もあまり下がりません。また、不動産は活発な売買市場があるので、ある程度保有したら築年で値下がりする前に売却し、築浅物件に入れ替えることで減価償却の影響はあまり大きくありません。しかしソーラーはFIT制度により投資価値的な寿命が20年と決められているため、減価償却分の価値が本当に無くなると考えた方が賢明ですし、売買市場がないため入れ替えも難しく、既に飽和状態であれば新しいものを作ってポートフォリオを若返らせることも出来ません。

ですからやはり減価償却費分の利益超過分配を利益と捉える事は間違っていると思います。

 

問題②:テールリスクに備えられているか?

2つ目の問題ですが、ソーラーファンドはあまり分散されてないように見えます。

投資案件数は多くとも、資産価値ベースで見ると一部の案件が全体の2、3割近くを占めていたりします。

ソーラーのテールリスクと言えば出力抑制です。

今回の九州電力の出力抑制によって、タカラレーベン・インフラ投資法人が運用するLS 霧島国分発電所、いちごグリーンインフラ投資法人が運用するいちご都城安久町ECO発電所(宮崎県)、日本再生可能エネルギーインフラ投資法人が運用する大分県宇佐市1号・2号太陽光発電所、カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人に至っては九州に保有する9つの太陽光発電所全てに対して「旧30日ルール(年間30日まで無制限・無補償に出力制御が行われる可能性)」が適用されており、いずれも出力抑制の対象になったと発表しています。

もう一つのテールリスクは災害です。

最近の関西国際空港が閉鎖に追い込まれた台風21号でも多くのソーラーパネルが吹っ飛ばされたようです。

他にも東洋経済などを読んでいると、結構大手の会社がやっているメガソーラーでも大雨によって土砂崩れでぐちゃぐちゃになっている写真を見た記憶があります。

ソーラーファンドは損害保険、利益補償保険などでリスクヘッジしているようなのですが、本当に大丈夫か心配です。

直接的なソーラーパネルの被害だけでなく、吹っ飛ばされたパネルによって起きた2次被害まで補償してくれるんでしょうか?

崩れた土砂の盛土するまで?個人に訴訟されても?

誰か詳しい人がいたら教えて欲しいです。

 

問題③:金利上昇で即逆鞘に

3つ目の問題です。

ソーラーファンドの借入金は20年間固定されていません。売上が固定されているにもかかわらず、金利費用が変動なのです。

タカラレーベンは全額変動、いちごグリーンは全額固定されていますが10年間まで、日本再生可能エネルギーは固定されているのが2割程度、固定期間も10年間まで、カナディアンソーラーは9割近く固定されてますがやはり期間は10年間。

繰り返しますがLTV50~60%でタカラレーベン以外ROA2%を切っているんです。ほんの少しの金利上昇で逆鞘じゃないでしょうか。

私は日本の金利は低いままだと思っていますが、それでも20年間少しも上がらないとは思いません。

平成バブルの最後に日銀がグイグイと金利を引き上げて不動産バブルを崩壊させた出来事が頭に思い浮かびます。

 

問題④:FIT終了後にどうなるか? 買取価格の切り下がり、撤去費用

4つ目の問題です。

当然ですが20年経てば固定価格の買取は終了します。

先程20年でソーラーパネルが使えなくなる想定をしましたが、20年先も使用できれば償却も終わっており丸々利益が得られるでしょう。

ただし売電価格は上記のスポット価格で10円/kwhくらいに下がってしまうため、今投資してる人達からすると利回りはぐっと下がってしまうでしょう。

むしろそもそも買取を拒否されることの方が怖いです。

また、借入金は固定価格買取期間終了までに分割返済してるので問題無いと思いますが、ソーラーパネルが使えなくなった時の撤去・処分費用は考慮されてるのでしょうか?

20年で償却して最後は資産価値ゼロ円ですが、本当は最後の撤去費用としてマイナスなんじゃないでしょうか?

下の記事では業者の6割が撤去費用を積み立てていないそうです。

FIT再エネ設備廃棄費用の報告を義務化 :日本経済新聞

最後の方で思わぬキャピタルロスが発生しないか要注意です。

 

以上、個人投資家が気にせず投資していると思われるリスクを挙げてみました。

もともとあまり興味がない投資対象だったのですが、目に付くところを色々挙げていたら長くなってしまいました。

投資というのは財務諸表や起こり得るリスクをしっかり把握した上で、それがリターンに見合うと判断された時に行うものです。

もし利回りやチャートばかりを見て投資していたらそれは間違った方向に進んでいるかも知れませんよ。

太陽光発電に投資するなら最初から利回りは3%と考える、組入資産を見て出力制御のリスクがないか、FIT制度適用終了後にどれくらい買取価格が下がるか、金利上昇リスクに耐えられるか、この辺りはしっかり確認しましょう。

私は素直に米国株投資をお勧めします。