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FRBの量的緩和縮小で起こるのは暴落か?日柄調整か?

S&P500が高値から1か月かけておおよそ10%下落したことで市場の雰囲気が悲観的な方向に傾いています。
FRB金利引き上げと量的緩和縮小が効いているのです。
 
そこで、量的緩和縮小でどの程度マーケットはネガティブな影響を受けるのか、今後いくつかの記事に渡って考えてみたいと思います。
 
ところで、米国株が急落した!というニュースで多くの投資家が悲観的になり、下落後に持ち株を投げています。
しかしながらだいぶ前から新興国株は下落していましたし、小型株も早いうちから下落、S&P500にしてもセクター別騰落率に緩和縮小の影響が出ていたことは以前お話しした通りです。
 
つまり、下落してから売っている方は完全に遅いのです。
そのような投資行動はマーケットに振り回されるばかりで百害あって一利なしです。
リーマンショックの時ですら下落率は50%強だったのに、既に10%下落して、これから再エントリーまであとどれくらい下落すると思っているんでしょうか?
むしろ反射的に売却し、そもそも先のことを考えていないのではないかと思います。
 
サラリーマン投資家には含み益に20%も課税され、売買手数料もばかになりません。
もし含み益が30%もあれば、手数料を往復1%として7%も没収されてしまいます。
つまり、タイミングも正確で、かつ大きな下落を見込んでいないと持ち株を手放すのはペイしないのです。
 
もし売るのであれば、どの程度下がりうるか予想し、買い戻すイメージまでしてからにした方が良いでしょう。
そうでないと、株価が下がってから恐怖感で売らされて、いつの間にか上げてから不安になって高値で買い戻すことになってしまいます。
 
一方ファンダメンタルを重視する投資家からすれば、下がるほどに安くなったと積極的になり、上がるほどに割高と慎重になれるのです。
実際、私が好んで買い増しをする時はこのようなタイミングです。
 
実は以前買いを判断したスケッチャーズはとある証券会社が評価を引き下げて株価が急落した直後だったのですが、買い判断をしてから、S&P500が10%下落、Russell2000が14%下落するなかで、1%と下落していません。
 
逐次買い増しを行うサラリーマン投資家に出来ることは買い増しのタイミングを出来るだけ上手にすることなのです。
 
そして全体的な方針としても私は量的緩和縮小では売る必要はないと考えています。
下がらないと言っている訳ではありませんが、株価のバリュエーションがそこそこで、米国家計の健全度が高いため、ITバブルやリーマンショックのような大天井ではないと考えているからです。
いつ買い戻すか?という問いに私の中で答えが出なかったのです。
 
 
FRB量的緩和縮小で起こるのは暴落か?日柄調整か?
FRBは3度に渡る量的緩和によって、バランスシートをリーマンショック前に約0.9兆ドルだったものから緩和終了時には4.5兆ドルまで拡大しました。
実に緩和規模は合計3.6兆ドル!1ドル100円換算で360兆円!あまり想像できないですね。
 
例えばニューヨーク証券取引所に上場されている株式の時価総額は2018年10月末時点で24兆ドル強、東証1部は2018年9月末時点で675兆円、世界最大の年金基金である日本のGPIFの運用資産は2018年6月末で160兆円です。
GPIFが2ついなくなってしまうと考えると3.6兆ドルがとんでもなく大きいということが実感できますね。
 
FRBは償還を迎えた債券を再投資することでこのバランスシートを維持していたのですが、2017年7月より再投資をやめることでバランスシートの縮小を開始しています。
その規模は、
2017年7月~9月 :月額100憶ドル
2017年10月~12月:月額200憶ドル
2018年1月~3月 :月額300憶ドル
2018年4月~6月 :月額400憶ドル
2018年7月~9月 :月額500憶ドル 以降このスピードで一定
と、3か月ごとにその縮小規模を月額100億ドル加速させています。
 
FRB保有資産残高:総資産(青)、米国債(緑)、MBS(赤)、その他(紫)

現在は2018年10月ですから最大速度の月額500憶ドルのペースで資金が市場から消えているのですね。


実際には再投資の停止なので、再投資が月額500憶ドル満たない月もあるので縮小ペースはもう少し遅いですが、月額500億ドルと考えると72か月(6年)で拡大された3.6兆ドルが回収されるわけです。結構早いと感じます。

年間に直すと6000憶ドル(1ドル110円で66兆円)、日銀のマネタリーベース拡大も年間70兆円でしたから、日銀の緩和と同じくらいの力が逆に働く訳ですね。
 
そしてどこまでバランスシートを縮小するかですが、FRBは明確な目標を掲げていません。
”これ以上縮小が必要ないとFRBが判断するまで”バランスシート縮小は続きます。
簡単に言えばマーケットが崩壊したら止めるということでしょう。
 
この量的緩和によってS&P500は10年間で800ドルから2800ドルまで上昇しました。
年率に直すと約13%です。

「株に投資すると何%儲かるか知っているか」でお話しした通り、米国株式の期待リターンは10%強のため、分配利回り2%を除けば毎年8%のキャピタルリターンですから、この10年間は年率5%もリターンが押し上げられていることになります。


この年率5%がすべて量的緩和のおかげなのであれば、今後は同じくらいマイナスの影響が出てくるはずです。


さらに縮小は10年ではなく6年のペースですから1.6倍のインパクトで5×1.6=8%のマイナスのインパクトとなります。ほとんど株のリターンがなくなってしまいますね。


しかしながらリーマンショック時の株価は極端に流動性がひっ迫した時の値ですし、FRBによる利下げ、オバマによる財政出動、最近のトランプ減税などの効果も大きいと思われるので、量的緩和縮小だけの影響はもっと小さいでしょう。

 
非常に簡単にイメージしましたが、株価の期待リターン10%強から、量的緩和縮小で最大8%のマイナスインパクトが差し引かれるという事です。なんとかプラスは維持できそうという感じです。

そしてニュースではすぐバブル崩壊とパニックを煽るのですが、量的緩和縮小は決められたペースで進められるので、突然のバブル崩壊ではなく、じわじわとバブル縮小、なのです。
 
皆さんは「日柄調整(ひがらちょうせい)」という言葉を知っていますでしょうか。
下落率が10%を超えたら「調整」、20%を超えたら「弱気相場」ですね。
 
「日柄調整」というのは横ばいを意味します。
上記でも述べたように株と言うのは年率10%のリターンが期待されてるので、1年横ばいだと、10%のマイナスと同義なのです。
 
上記の計算から量的緩和縮小によってじわじわとマイナスの影響を受けても長期で見れば日柄調整になるのではないかと考えています。
これが私がいつ買い戻すか?の答えが出なかった理由です。
支払い義務が確定している確定給付年金や保険商品ではこの日柄調整は困りものですが、個人投資家にとっては関係ありません。
 
マーケットタイミングの難しさ、税金など個人投資家の不利な条件、健全な米国家計、そもそも自分の保有株があまり下落していない、この辺りも勘案して私は売却ではなく、選別していきます。
 
量的緩和縮小の影響は引き続きいろんな角度で検証してみたいと思います。